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続!出張買取は交渉力が決めて! 交渉力を強化するにはどうしたらよいか!

更 新:2026-06-30
テーマ:中古レコード店の経営


<目次>
❶買取交渉ではウィンウィンを目指すべし!
❷お客の求めていることを把握する。
❸買取はお客と業者の共同作業である。
❹駆け引きについて。
❺交渉カードについて。
❻押してもダメなら引いてみること。
❼大量!2000枚のレコードを出張で買取した例。
❽交渉は断られてからが本当のはじまり。
❾まとめ
___________


❶買取交渉ではウィンウィンを目指すべし!。

交渉力の有無は、中古商売にとっては業績を左右するほどの重要事項だ。しかしながら、交渉に自信がない、そもそも話が下手、性格的に接客がダメ、そういう人も多いだろう。生まれつきで仕方がないと思われるかもしれないが、あきらめることはない。 買取交渉にはパターンがある。その流れさえ覚えてしまえば、苦手な人でも案外うまくいったりするのである。コツさえつかめば何とかなる。まあ、自転車を初めて乗るようなものか。

そんなわけで、今回も引き続き、 苦手な人がどうやって交渉していくか、例を交えて述べていきたい。特に、前半の会話のやり取り、後半の駆け引きと妥協、そしてウィンウィンの考え方について、重点的に述べていきたい。

❷お客の求めていることを把握する。

ウィンウィンはよく聞く言葉だ。ただ、誤解している人が多いと思うが、 ウィンウィンというのは、必ずしも高く買ってあげることではない。お客の全員がお金をほしがっているわけではないのだ。世の中なんでも金だというような風潮があるが、そんなのは妄想だ。経験を積んでいけば当然わかってくるが、買取の仕事をしている若い人は、早く頭をリセットすべきだ。

動機は様々。お金が第一というタイプは、私の経験では20~25%ぐらい。 それよりも、部屋を片付けたいという人のほうが多い。片づけたいが捨てるのはもったいない。出来れば全部引き取ってもらいたい。特に引っ越す人にとっては、お金はなくてもいいから、一日も早く処理したい。そうなると、お金はあまり関係ない。片付けが最優先。お金は只でもいいのかもしれない。

はっきり言うが、 お金はいらないという人に、真剣に査定しようとするのは筋違いだし滑稽である。このことは前回も述べた。 へんにまじめな業者もいるようだが、金額を計算する前に、まずはお客の話しをよく聞こう。そして、本当の動機は何なのかを聞くべきだ。

私の経験では、一般的なお客は、お金も多少は欲しいが、どちらかというと片づけのほうが大きい。だから、そういう人にはできる範囲で引き取りをしてあげ、お金も少しは払うということでいいと思う。

では、お金が第一の、ガメツイ系の人にはどう対処したらいいか。その手の人も2割以上ぐらいいる。それに対しては必要な説得をし、だめなら、相場の上限ぎりぎりの線で譲歩する必要も出てくるだろう。私なら、あまりひどいお客の家には最初から行かないことにしている。そういうガツガツしたお客は電話でわかるのである。これは前回の記事に詳しく述べた。でも、若い人ならチャレンジすべきだろう。かなり苦労することになるが、何事も勉強だ。

とにかく、そういう様々なお客と交渉し、どうやってウィンウィンを達成するかだ。

❸買取は、お客と業者の共同作業である。

クソ真面目で杓子定規な人、ガチガチな職人タイプは、どうしても独り相撲になりやすい。前者は若い人、後者はベテランに多いが、いずれも苦労することになる。 思えば、私も昔はバカ正直の典型で、交渉も空回りが多かったが、10年ぐらいで気が付いた。だが、それ以降は気楽にできるようになり、買取成績も向上した。

そもそも交渉とは、自分と相手の共同作業である。一方的な自己主張はだめだが、相手の言いなりでもいけない。白でもないし、黒でもない。正解は中間のグレーゾーンのどこかにあるのだ。それがウィンウィンを目指す、柔軟な買取交渉というものだ。

❹駆け引きについて。

駆け引きというと、どうも印象がよろしくない。口車に乗せて相手をだますような言葉の響きがあるが、実際はそうではない。交渉の駆け引きとは、押したり引いたり、あるいは、ここで方向を変えるとか、どういう条件をどのタイミングで出そうかとか、流れをうまく乗りこなすための運転技術だと思えばよい。駆け引きというと、何か特別なことのように思われるかもしれないが、実は、どんな人も日常会話では、無意識にこういうことをやっているはず。

❺交渉カードについて。

「交渉カード」という言葉があるが、われわれ業者にもカードはある。具体的に列挙してみる。

■「この量と内容で、わざわざ出張してくれるような店はありませんよ」
■「このジャンルの専門はうちだけですから」
■「ほかの店で、これを全部引き取ってくれるところはありませんね」
■「今月は買取が足りないので、いつもより高めに買取しますよ」
■「もしこの金額が安いというなら、今、この場で、他店に電話をかけて聞いてみてくださいよ」等々。


これらは、ほとんどは実際に私がよく交渉中に使っていた言葉だ。ただし、最後の強烈なやつは、ケンカ腰で言ったセリフだからあまり言わないほうがいいし、言うにしても工夫がいる。

これらのカードは、交渉が行き詰ったときに適切に切っていく。ただし、嘘は言わないこと。他店の耳に入ることもある。しっかり繰り返し言うのが効果的だ。

❻押してもダメなら引いてみること。

一方的に押し通そうとするのはダメだと先に述べた。だから相手も固くなり、断ってくる。相手の言い分をよく聞くこと。そして、交渉カードを適切に切りながら、主導権を握る。柔軟にやるから、交渉はまとまる。

簡単にいうとこうだ。 最初は押せるだけ押す。だが、行き詰ったら、いったん立ち止まる。この立ち止まることを躊躇してはいけない。

断られているのに、意地になって無理に押し続ける人がいる。これはダメだ。私も若いころはそういう傾向があった。断って奥に引っ込もうとするお客を追って、背中から何とか説得しようと大声出してワーワー言ったが、結局ドアをぴしゃりと絞められた。恥ずかしながら、若気の至りもいいところだ。

つまり、ちょっと断られただけでも、ああ、そうですかとあっさり兜を脱ぎ、そのままあきらめて、すたこらさっさと帰っちゃうのである。これは交渉ではなく、試合放棄と同じこと。交渉以前の問題だ。断られてからどうするか。ここが考えどころ。プロとして乗り越えるべき大事なところだ。

とにかく、交渉が行き詰まったら、モードを切り変え、相手の言い分をじっくり聞こう。つまり、いったん引くのである。そういう時間を作っていくのが交渉のコツ。そして考えがまとまったら、また押せばいい。 相手の話を十分考慮したうえで譲歩案を出すのだから、了解してくれることが多い。

「押してもダメなら引いてみな」とは、よく言ったものだ。いったん引いてから譲歩案で勝負する。これが 交渉の二度押し戦法。交渉が難航したときの必勝パターンがこれだ。

交渉上手な人の場合は、 金額を提示した最初の段階で、譲歩の上限ラインもすでに頭にあるもの。それができれば本当のプロ。どんな業界でもやっていけるというものだ。では次に、買取に成功した私の事例をご紹介しよう。

❼大量!2000枚のレコードを出張で買取した例。

以前、LPが2000枚ほどあるという連絡が店に入ったので、遠く三笠市まで買取に行ったことがある。60歳ぐらいのやせ型のおとなしそうなご主人が迎えてくれ、いつものように、簡単な挨拶とちょっとした世間話をしながら部屋に上がった。その部屋は四方の壁すべてがレコードで埋まっていた。

挨拶や世間話は二言三言の簡単なものでいい。時間にしてせいぜい1分。あくまでも査定前の顔合わせ、口ならしだから、長すぎてはいけない。

次にモノをざっと見る。さっそく、モノを見てのやり取りに入る。「どれどれ。え~と、ロックとイージーリスニング、歌謡曲、いろいろありますね」「ただですね~。ロックはいいとしても、歌謡曲とかイージーリスニングは、あまり売れないんですよ。値がつかない場合が多いです。他のお店でも積極的に買取ってるところはないですからね~。」「う~ん、盤状態はちょっと傷ありが混じってるかな。あと、ビニールの外袋がついてないから、ジャケットの状態もちょっと悪くなってますよね~」などなど。 モノを見ながら、気が付いたことをどんどん話す。大量の場合で5分ぐらいだろうか。ここでは、だいたいの状況、雰囲気が相手に伝わればいい。

さて、ある程度話した後は、しっかり査定に集中。ただしここは概略的な査定だから、本格的に金額を出すのはまだ早い。 時間は、大量なら10~15分ぐらいがいいかもしれない。

考えがまとまったら、ご主人に声かけをし、「え~とですね・・。確かに量はたくさんあるんですが、売れ筋のものはあまりないですね。こういう売れないジャンルのものが半分ぐらいあり、残り半分は安くてよければ値段は付けられます。まあ、100円ぐらいのが多くなりますが。高いものはすこしだけですかね・・・」と、正直に説明する。 ここでへんに期待を持たせるのは間違いだ。ダメならダメだとはっきり言わなくてはいけない。

このご主人は、最初はそんなにお金にこだわっている人には見えなかった。しかし、表情が暗く沈んでいるのが妙に気になった。私が安いと言ったからなのか、もともとこういう人なのか。「ええと、だいたいの仕分けをすると、まずこの山は全然だめで、この山が1枚100円程度。それから・・・。」ざっと仕分けをし終えて、概略査定の結果を告げた。

ご主人の顔は沈んだままだ。心の動きがまったく読めない。私は不安を抱えたまま「とりあえず、これで計算してみますか?」と聞いて了解を取る。私は金額の算定作業にはいるも、不安を払拭しきれない。

先にも述べたが、ここでは査定と言っても、概略的な査定と金額を算定する査定の、2種類あるということだ。 この査定の2段階方式が買取交渉の最重要ポイントになる。コツの中のコツ。最大のコツと言ってよい。

ところで、概略説明なしに、いきなり金額を計算、提示をするとどうなるか?それでもうまくいく場合は確かにある。しかし、 意外な数字にショックを受けるお客も少なからずいる。一瞬、顔が引きつり、えっ!・・・って顔になるのである。こうなると気まずくなるし、交渉が壊れても不思議じゃない。

さて、ダメな店主の多くは自分勝手な人が多いようだ。仏頂面で説明もなく、いきなり金額をドン!と出すのだから、断られても仕方がない。こういう人は鈍いというか、その自覚が全くないから始末に悪い。うまくいかないのは相手のせいだと思っている。自分のことはつゆほどにも頭にない。

私がこの業界に入って気が付いたことは、 多くの店主は、一般社会で営業的な訓練を十分受けないまま、この業界に入ってきているように思われる。これではダメに決まっている。これから何か、商売をやろうかという若い人は、最低3年以上の営業経験は持つべきだ。成績なんか悪くてもいい。経験を積むことが大事なのだ。

では、経験不足な人は、この仕事はむりなのか。いや、必ずしもそうではない。 本当にダメなのは、最後まで自覚のない人たちのこと。 たとえ営業が苦手でも、事前の説明をきちんとやるだけで、ずいぶん結果は違うはずだ。事前の説明、概略査定の実施は、買取交渉のクッションになりうるものだ。クッションさえあれば事故ることはない。

話がそれたので戻そう。私は事前の説明をし、レコードの金額を計算するというところまで述べた。なにしろ2000枚だから金額の計算に20~30分かかったかもしれない。計算の結果は10万円。それを主人に告げると、主人は「う~ん・・」とうねり、「いや~。 そんなもんかい・・・」と小声でつぶやいた。

❽交渉は、断られてからが本当の始まり。

私の不安は的中した。ご主人は消沈し、ひざまづいたままじっと動かない。このままでは終わってしまう。私はあわてて、説得を試みた。まずは押しの一手だ。「あの・・先ほどもお話しした通り、この手のレコードは売れ筋ではなく・・」と概略のときの説明を再度、繰り返すも、ご主人はうつむいたまま。絶体絶命。ここまできながら壊れてしまうのか・・。

私は、あれやこれや話した後、 「この手は、ほかのレコード屋も買い取らないし、札幌の業者でわざわざここまで出張に来てくれるところはないでしょう・・・」と最後の念押し。

すると、「いや~、そうなんだよな。なかなか来てくれないんだよなあ」と、沈黙を守っていたご主人が、ため息まじりにポツンと一言。この言葉が転機になった。どうやら他にも電話していたようだったが、それはともかく、この会話がきっかけで、ようやく主人の態度も軟化したようだ。この長い交渉にも、一条の光明が差し込んできた。

私はここでちょっと引く。「それにしてもご主人、レコードをずいぶんと集められましたよね~」と言う。すると、主人はしみじみと、自分のレコードについて語り出した。私も相槌を打ちながら話を聞く。人は話すことで心の整理をするのだろう。

私はここはじっくりでいい。急いてはいけない。時間が解決に向かわせてくれることもあるからだ。「う~ん。でも10万か~。もう少し、何とかならないの?」とご主人。私は「そうですね・・・じゃあ、12万でいいですかね。これ以上はちょっと難しいのですが」と言うと、ご主人はうなずき、無事、話がまとまった。金額の提示から30分ぐらいたっていただろうか。

この12万という数字は、早い段階から頭にあった。10万を譲歩して12万。我ながらいいバランスだ。実は、私の場合は、譲歩金額は最大2割増しまでと決めている。もしも、倍の20万出すと言ったら、おかしいだろう。お客は喜ぶかもしれないが、店の信用も何もあったものではない。(※20万出せるのなら、最初の10万はいったい何だったのか、という矛盾した話になる)

❾まとめ

さて、いかがだったろうか。買取の決め手になったのは何だったのか。一つは、こんな遠方までわざわざ買取に来てくれる業者は他にないかもしれないと、ご主人に思ってもらえたこと。また、レコードを処分しないと部屋の片づけができないという家庭の事情に合わせて、できるだけ不要なレコードも引き取ってあげる旨の話もしていたこと。この二つは強力だ。多少金に不満はあるにせよ、今、処分するしかない、それがベターな選択だと、ご主人を説得できたことだ。

結局このお宅は、挨拶に始まって、概略説明、査定、説得、買取が決まった後の箱詰め作業、車への積み込み作業まで、 全部で3時間近くの長帳場となった。(※普通の量で、難航しなければ、全部で30分以内が多い)交渉は大変だったが終わりよければすべてよし。レコードが処分できたことで部屋が一気に広くなり、金額にも納得してくれ、トータルでウィンウィンの取引になったと思う。

誤解されると困るが、こういうお宅はレアケース。すべてがこんなに大変なわけではない。普通の買取はもっと簡単に決まるほうがはるかに多い。 ただ、いいもの、大量の場合はそれだけ難航する場合が多いのは確かだ。交渉が苦手だという人は、最初は下手でもいいから、とにかくひるむことなく、ねばってほしい。そのうちコツをつかめてくる。昔、上司から営業音痴と言われたこの私ですら、何とかやっているのだから。(了)


次回以降の掲載予定!

■中古店店主は、サラリーマン経験がはたしてあるのか?店主の前歴あれこれ。
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